正男ちゃんの本箱

正男ちゃんと呼んでくれるのも今はもう父方の甥と姪のふたりだけ、で命名してみた。

銀の匙にネムノキ

   中勘助先生の「銀の匙」にネムノキが登場する場面がある。物語の主人公にとつて初めてのお友だち、お国さんと遊ぶシーン。「遊び場の隅には大きな合歓の木があつてうす紅いぼうぼうした花がさいたが、夕がた不思議なその葉が眠るころになるとすばらしい蛾がとんできて、褐色の厚ぼつたい翔をふるはせながら花から花へと気ちがひのやうにかけまはるのが気味がわるかつた。合歓の木は幹をさすればくすぐつたがるといつて、お國さんと手のひらの皮のむけるほどさすつたこともあつた。」(前編31)。

虚実を交えてるかも知れない全篇回想の物語だが、著者の記憶力には驚くばかりだ。私が小学生の頃知っていた木といえば桐、杉、桜、藤くらい。ネムノキを初めて見たのはいつ何処でだろう。